私の母は昭和20年、終戦後に高知県南国市立田(たてだ)に生まれました。母の子どもの頃の思い出話などから、母にとって≪立田の神社≫と≪桂浜≫が特別な場所であることを私は知ってはいました。桂浜については「故郷でもないのになぜだろう?」と疑問に思いつつも、特別それについて深く聞くことはありませんでした。
ある時、いつものように雑談をしていると母から「学生時代に嫌なことがあると、一人でバスに乗って桂浜に行っていた。海や砂浜の砂を見ていると自分の悩みがちっぽけなものに感じて、すっきりした」ということを聞きました。一人で砂浜に座る高校生の母の姿を思い親近感がわいたと同時に、母がいつも明るくポジティブ思考である、そのルーツに触れた気がしました。
「人に歴史あり」の言葉通り、どんな人にも、その人だけの体験があり、大事にしている思いがあります。家族すらあまり知らない、その人の大切なものをカタチにしてみるのはおもしろいんじゃないか、そんなことから、その人らしい写真と大切な思いやメッセージを書き留めた1冊をつくってみたいと思いました。